基礎講座第15回
原稿用紙
シナリオ実践塾クラム
第3章は、課題回答者のみの配信になります。
第15回 第16回 第17回 第18回 第19回

課題15

 ご自分の作品(シナリオ)を執筆して下さい。

  1頁20字20行の書式にして下さい。
  頁数は80頁前後。おおよそ1時間ドラマの原稿枚数になります。


 締切は次の金曜日です。
 朱を入れて、添付で指導・アドバイスを行う場合があります。そのため、
 
※テキストではなく、ワード文書でご提出下さい。

 脱稿を目指して下さい。
 もし未完成の場合は出来たところまでそのままお送り下さい。
 指導とアドバイスを日曜日配信のメールで行います。



受講生の皆様

今回の講座より、いよいよ最終章『執筆する』です。
これまでの講座の目的、狙いをここで改めて再確認して下さい。

今後は受講生各自の作品を用いた指導・アドバイスになります。
受講生の知識・力量・レベルに合わせて
順序が入れ替わったり、講座を飛ばす場合があります。

また、作品の提出がなければ講座は進めません。
1ケ月の猶予をおき、課題未提出の場合は配信を終了致します。

創造する
第1回 感動 映画やドラマ作品からご自身の感動の要素を探りました。
第2回 テーマ(主題) 作品のテーマ(主題)とは何かを考えました。
第3回 素材と着眼 作品の素材とは何か、作者の着眼は何かを推測しました。
第4回 対立と葛藤 作品における対立関係と主人公の葛藤を明らかにしました。
第5回 種類と形式 作品を一言で表現し、その種類や形式を考察しました。
第6回 ジャンルと分野 創作の知識と分析力、作者の思い、客観性などを学びました。

構築する
第7回 状況設定 イメージトレーニングを開始しました。
第8回 登場人物@ ドラマの要である主人公について考えてみました。
第9回 登場人物A ドラマを盛り立てる敵役、脇役、端役たちを考えました。
第10回 小道具 ドラマを創り、ドラマを深める小道具について考えました。
第11回 構成 ドラマの基本構成を元に、全体像を考えました。
第12回 ハコ書き シナリオに興すのに必要で、便利な作業について学びました。
第13回 あらすじ シナリオを売り込むためにも必要な作業です。
第14回 企画書 書き方や留意点などを学びました。

執筆する
第15回 原稿用紙 創作に着手します。
第16回 心理描写 人物の心情、葛藤などを的確に表現する術を学びます。
第17回 はしら 不適切なはしらを排除し、はしらの役割について学びます。
第18回 ト書き 不適切なト書きを修正し、ト書きの役割について学びます。
第19回 台詞 人物の魅力を引き立てる台詞について考察します。
第20回 公募の傾向と対策 仕上げた作品の提出先や応募先を検討します。


ご注意下さい
 この講座が第3章の始まりです。これまでの課題回答や、今回の課題回答がなければ、次の講座へ進むことは出来ません。そのため、該当する受講生には定例の日曜日配信は行わず、未提出課題の回答をお待ちします。


助言・意見
核3
 表現者には「核」が必要です。その核がなく、ただ上塗りを重ねても、すぐにはげ落ちてしまいます。物語の中にも核があります。それは山場とか見せ場、或いはテーマとも呼ばれ、時にはそこから全体を作り上げたり、全体が見えたりします。
 核1 核2

琴線2
 核を鍛えるためには、まず己の「琴線」に触れるものとは何かを知ることです。自分が何に感動するのか、それを知らずに視聴者をも感動させることは出来ません。

感動2
 ご自分が感動しない作品を他人が感動するはずがありません。ご自身に問い掛けて下さい。 「私自身がこの作品に感動するのか?」「どこが、どこで感動させられるか?」「私は何に感動するのか?」「何故感動したのか?」

思想2
 主題には作品の中心となる或る「思想」が組み込まれます。貴方が作品を創造する時、そこにも主題や思想が必要です。そしてそれは、普遍的でありながら個性的であり、作品の中に分かりやすく、明確に示されていなければなりません。

曖昧2
 テーマが曖昧であやふやな作品は読者や観客に何も残しません。人の心に何も残らないドラマ、それは失敗作です。

不変と普遍
 テーマ(主題)には、自分自身に問い掛けて得られるテーマと時代が求めているテーマがあります。時代が求めているテーマは常に変化しますが、自分自身に問い掛けて得られるテーマ、即ち自分自身が持っているテーマは不変であり、普遍です。まずはそれを見出し、それを信じて下さい。

筋道
 テーマを見い出し、それをドラマの核、或いは軸とすることで、作品には流れ・筋道が生まれます。その作品のテーマを導き、打ち出していくのが脚本の作業とも言えます。 何を選ぶのも自由です。主題(テーマ)はこうでなければならないというものはありません。ただ、自分なりの視点、切り口が大切です。

切実
 習作時代の作品創りでは、社会性の強い、切実なテーマ(主題)を選びがちです。けれどドラマは何かを視聴者に訴え、考えさせ、或いは作者の考えを押しつけるようなモノではありません。それは教育であり、ドラマの本質から離れてしまう発想です。ドラマは説得するモノでも、納得させるモノでもありません。

お題目
 作者の思いは「考え」とは違います。当たり前のことを当たり前に唱えても、声高にただ理屈や主張を述べても、それは受け手に何も残しません。「お説ごもっとも」で終わってしまいます。(下記にQ&A)

仕向ける
 例えば「ダムには反対だ」それは誰でも言えることです。作家は「何故反対なのか」を明確に言い表せなければいけません。そしてただお題目を唱えるだけでなく、そこに想像力を働かせて創造し、受け手が自分の思いを理解し、共感、納得するように『仕向け』なくてはなりません。この『仕向ける』というのが作家にとって大切な命を削る作業で、大上段に、声高に、ただ理屈を叫んでも無駄です。それでは「お説ごもっとも」で終わってしまいますから。

外す
 作者が作品に込めた主題が、観客や視聴者に届かない場合があります。或いは作者の狙いとは異なった受け止め方をされる場合もあります。これは「分かりやすく、明確に示されていない」という欠陥以外に、受け手の年齢や感性を考慮しなかった場合にも起こります。そこから逆転の発想で、主題を考える時に、ターゲットを絞ってみるのも良い方策です。

答え
 「全ての答えは自分の中にある」が塾長の考えです。

何を
 新人は何を描くかについて悩むけど、どう描くかは考えない。まずは「芝居」を考えてみましょう。


描き方サンプル




シナリオセンター



Q&A
派手なシーン
 脚本について質問です。「旅する女、シャーリーバレンタイン」は、派手なシーンの殆ど無い映画です。一方「レオン」や「グラディエーター」は、良い映画であるのは同じなのに、派手なシーンや残酷なシーンが沢山出てきます。そして、派手であればあるほど、残酷であればあるほど、ハラハラドキドキします。これが「エンターテイメント」なのでしょうか。シナリオが優れていれば、殺人やセックスがなくても面白い。というのは頭では分かります。けれどそこに、派手なシーンがあれば、もっと面白い。と考えてしまうのは、間違っているのでしょうか。
(塾生010322)
 「旅する女/シャーリー・バレンタイン」は観ていません。御免なさい。確か育児や家庭が一段落した婦人が、ギリシャかどこかへ旅をして、恋もする……みたいな話ですよね。懸賞公募にありがちな素材で、私にはちょっと食傷気味な話です。食わず嫌いでしょうか、ビデオ屋で探してみます。ご質問のお応えは難しいですね。「エンターテイメント」の定義ですよね。私は、ドンパチや血みどろだけがエンターテイメントとは思っていません。答えを探るには、観客は、映画やドラマに何を求めるかと、視点を変えてみると良いかも知れません。確かに人間の1番の関心ごとが、「生死」である以上、生きるか死ぬかは観客を引っ張ります。殺人やセックスを取り上げるのは、物語作りでは安易な妥協でもあるでしょう。「どうやって生きるべきか」という問い掛けもありますものね。ドラマの主人公の生き様から何かを求めようともするし、自分が出来ないことを成す登場人物たちに、自分自身を投影させ、感情移入して観客は楽しみます。そんな観客が求めるモノを満足させる作品……それが、エンターテイメントではないでしょうか。
(2001.3.25)

映像指定・記号
 オーバーラップ(O・L)やワイプ(WIPE)の多用が何故いけないのですか?
 ビデオカメラの映像で構成されるドラマという事を提案してみたのですが、こういう映像に関したことは脚本家が企画書で提案する範疇に入るのでしょうか?
 台本はコンテやカメラ割りを考えて書いたほうが良いですか?
 ドラマ全体の雰囲気に関わる指定は、企画の面白さになると思います。そうではなく、台本上での細かな指定、例えば業界用語集の中で「監督の領分である」とご紹介した撮影方法、OL、FO、パン、ズーム、ワイプといった細かな映像指定を台本の中でするのは避けたほうが良いでしょう。それはシナリオとして駄目ということではなく、監督始め現場のスタッフたちから反感をかうことがあります。知識だけで、現場の苦労も何も知らないのに知ったかぶりをすることと同じですから、そのような行為・書き込みは避けたほうが無難です。
(2001・11.20)
 但し(笑)企画書ではなく、台本表記の場合、ご自分のイメージを大切にされることは必要です。台本の場合の双眼鏡、望遠鏡、ライフルの照準鏡などの「ごしに指定」は、事件物などではサスペンスを高める効果があります。但し(笑)、それらと違う「カメラのファインダー」や「サングラス」など、ちょっと首を傾げてしまうような「ごしに指定」は禁物です。首を傾げる理由を探るためには自問自答してください。「そうする必要、意味があるのか?」です。
(2003.6.28)

見せ場
 見せ場というのは、具体的にどういう場面なのか、教えてください。
 簡単に言えば「観客を惹き付ける場面」ということですね。具体的には喧嘩などの争い事やサスペンス、スリルといったハラハラドキドキするようなシーンや、美しい風景や見慣れぬ光景などのドキュメンタリーな映像、例えば天変地異や動物の群れなどが押し寄せてくるのも惹きつけられるでしょう。それ以外にも人の生き死にや、男女のラブシーンがありますね。あと、これらの見せ場は沢山あって、作品の中に散りばめられている方が良いですね。それと1つ1つが独立しているより複数重なっているのが効果的です。『誰かが夢を覗いている』を監督してくださったのは神代辰巳さんでしたが、男女争うシーンを新宿の通勤ラッシュの中で撮ってくださいました。男女以外のサラリーマンやOLの群れが、全員背を向けて職場へ向かっている。ちょっと異様な光景で惹きつけられました。
(2002.04.05)

クラム事務局 zimu@kuram.tv