基礎講座第18回
ト書き
シナリオ実践塾クラム
第3章は、課題回答者のみの配信になります。
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課題18

朱の下線は何故かを考え、回答をお寄せ下さい。


  締切は次の金曜日です。ワード文書の添付でご提出下さい。

  この頁の最後に「駄目だし」があります。
  回答のヒントとして、或いは自問自答の切っ掛けとしてご活用ください。


講座
基礎知識「ト書き」もご参照ください。
箇条書き
 ト書きは箇条書きで表すのが一番です。長くダラダラした文章は伝わりにくいでしょう?

説明ト書き
 ト書きでの不必要な説明は控えましょう。特に初心者に有り勝ちなト書きは、ドラマやその進行とはあまり関係ないその場の状態、状況、伏線にならない物の形状や色、或いは映像では伝わらない由来などを追い求めて細かく描写する傾向です。

曖昧ト書き
 「おそらく」「或いは」「思われる」などの曖昧表現は不可です。作者が決めないで、誰が決めるのですか。

客観ト書き
 主観(作者の意見や感想など)不可。客観(第三者の視線・視点)表記で。主観表記は、読み手と同じイメージを共有するには不適切な表現です。

映像描写
 映像を書き写すような表現は、読み手にイメージを与えるだけでなく、読みやすく、期待感も加わります。

ズーム
 物語全体を見つめている貴方の「俯瞰」に気をつけましょう。或いはズーム。パッと見で印象に残るものをまず描写しましょう。必要であれば、それからその説明を簡潔に加えましょう。

現在形
 物語は常に現在進行形です。過去表現『〜だった』などが混じると混乱します。

即物描写
 情緒的表現は不要です。

具象的
 具象とは抽象の対義語で、「目に見える形のあること」「姿や形をもっていること」です。「具象的に」とは、情景が浮かぶように、書き表して下さいということです。

字幕説明
 テレビでは簡単な時間経過や場所は字幕(タイトル/T表示)で表します。けれど映画に見られるような、字幕による長文の説明文は不可です。これはテレビの特質を考えればおわかりでしょう。映画館のように集中して視聴者は見てくれません。

てにをは
 人物名につける助詞の扱いに注意。特に「は」。(恵子は歩く)でなく、(恵子、歩く)。

ながら
 「〜しながら」というト書きは使いがちです。台詞の後か前に書くのかという疑問もありますが、「ながら」は前に書くのが通常です。後に書く場合は、ト書き本来の「と」書きで「〜する」です。

誤字
 字を誤るのは、その事物について知らないことを告白しているようなモノです。そして、文字の誤用は文章の質を下げて読者を混乱させます。提出前に何度も読み直して、怪しいと思ったら辞書をひきましょう。特に同音異義語・同訓異義語には注意しましょう。塾生の原稿で暴走族の「特攻服」を「特効服」と何度も繰り返していた方がいます。言葉の正誤集

カタカナ
 多用は禁物。思わぬ落とし穴があります。そう言えば、大阪ミナミの高級クラブで、東大卒と自慢していたオヤジが、ホステス相手に「さ、三人でデュエットしよう!」と言って学歴がバレたという話があります。

ト書き無用論
 ト書きはなくても何とかなる。橋田さんはト書き否定。書かない。

台所
 不注意な省略を、ト書きにまで持ち込んむのは、大きな問題だと思います。台所の雰囲気、何が飾られているのか。テレビは点いているのか……、お弁当の中身、卵焼きは塩味か出汁か、砂糖か……。些細なことと思われるかも知れませんが、そんな情景や細かい描写、或いは台詞で、その家族や家庭、暮らす人々の思いまで表現出来ます。

表札
 特定の文字が書かれたモノ、例えば表札やプレートなどを表す場合、その固有名詞は『 』で表記する。『高千穂小学校』『国定興業』など。

封筒
 例えば浮気現場の写真を興信所が撮影したことを表す場合、その興信所の名が入った封筒を側に置くように指定する方法があります。

スーツ姿とOL姿
 「スーツ姿」と「OL姿」、同じく人物を表すト書きですが、この違いにお気づきでしょうか。「スーツ姿」は見た目の現象そのものを現しています。けれど、「OL姿」は、イメージの表現なんですね。この、ご自分のイメージをシナリオで表現することが大変難しく、伝わりにくい。また、脚本家志望の方が陥りやすい罠の一つです。書いた方はイメージがあるのですが、読み手が同じイメージを持つかどうか……。それを映像として表現しなければならない、例えば衣装を用意するスタッフが困ってしまう。書いた方はそれで人物を表したつもりでいるのですが、上手く伝わっていない……台本の特徴であり、難しい所で、そこに罠があります。ちょっと理屈っぽいですが、大事なことですので心掛けて下さい。


Q&A
イメージ
 イメージというのは、作者のイメージのことでしょうか? それともシナリオ用語としてあるのでしょうか? その表記方法についても教えて下さい。
 面白いご質問ですね。確かにイメージは作者の持つイメージではありますが、シナリオの中でも「イメージ」と表記します。ここに客観と主観の相違があるのですが、作者のイメージはあくまでも主観、シナリオでの表現は客観的かつ具体的。つまり主観を客観で表す作業が必要となります。それを例えばはしらやト書きの中で「イメージ」と書き表し、「自分(作者)はこんな映像表現をしたい」とスタッフの皆さんに訴えるわけです。
シナリオ用語としては、回想やフラッシュバックなどと同じく、物語の流れを一旦中断して、より深めたり、視聴者の記憶を呼び覚ましたりする時に用いられます。
(2002.10.09)

括弧ト書き
 括弧ト書きは多用するなと教わりましたが? 括弧ト書きを用いる場合の注意点を教えてください。
 括弧ト書きは、ト書きで表すことを台詞の中に簡単に組み入れたモノです。(苦笑する)とか(小声で)などで、その人物の表情や簡単な動作などを指定します。俳優の中には、ご自分の台詞しか読まない方もいますから「(苦笑して)その手もあり」ですね。だからと言って多用はお勧めしません。理由の1つは、読めばどのような仕草になるか分かるようなことまで指定することがクドイということ。2つ目に俳優の演技の幅を狭め、監督の演出領分を侵すことになる場合があること。3つ目に、ドラマの流れの中で分からせるべき喜怒哀楽の感情(怒って、悲しげに、淋しげになど)まで表すことがあり、その場合、脚本家が創作の努力や基本を放棄しており、NGであることです。これらを総合的に見て、本来シナリオには、そのような指定なしでも、自然に人物の感情・動作などが現れており、分かるものでなければいけないということになります。また括弧ト書きを用いる場合は、見方を変えて、動作や仕草、表情などを指定するのではなく、基本は台詞のトーンの変化を描くモノのだと考えてみては如何でしょうか。変化があれば有用であり必要であり、ドラマも面白くなります。
(2002.06.07)

駄目出し
ト書き
抽象的 「イメージが湧かない」
映像的 「絵にならない」「映像的表現をして下さい」
心情表現 「映像でどう表すのか」
曖昧 「どこにいるのか」「誰がいるのか」
切れ 「ダラダラしている」「切れがない」

クラム事務局 zimu@kuram.tv