基礎講座第17回
はしら
シナリオ実践塾クラム
第3章は、課題回答者のみの配信になります。
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課題17

朱の下線は何故かを考え、回答をお寄せ下さい。


  締切は次の金曜日です。ワード文書の添付でご提出下さい。

  この頁の最後に「駄目だし」があります。
  回答のヒントとして、或いは自問自答の切っ掛けとしてご活用ください。



講座
基礎知識「はしら」もご参照ください。

 直筆原稿の場合、はしらの頭にある「○」を小さく書く方がいます。極端な例では「●」だったりします。これはシナリオの基礎や役割を知らない現れです。この「○」は、中に通しのシーンナンバーを入れるためのモノです。

 シーンナンバー
 シーンナンバーは脱稿した後に入れるモノです。通常は印刷所での作業になります。また、脱稿まで、シーンの入れ替え作業は余程の達人でなければ当たり前です。下手に先に番号を振ったり、記入しながら書き進めると、後で混乱しますし、数字に捕われて入れ替え作業が出来なくなったりします。

場所指定
 はしらは具体的な場所を指定しましょう。また基本形を忘れて人物のアップや表札・木札などをはしらとして立てることは、新人の皆さんにはお勧めしません。シナリオは設計図です。まず、撮影場所を探すスタッフが分かりやすいように、指定してあげて、撮って欲しい絵はト書きに書きましょう。

刻限指定
 時間指定で(午前)や(午後)が必要かどうかというご質問がありましたが、これは設計図としてのシナリオの役割から考えてみればわかります。時間指定は「その時間帯の映像を撮ってください」という指定です。ですからスタジオ撮影であれば照明に関わり、屋外であれば夜間撮影や夕日、朝焼けの映像を撮るためのスケジュールを組まねばなりません。他の「指定」とも関わりますが、意味のない指定であれば、現場を混乱させるだけて無意味です。

季節指定
 はしらに(夏)とか(冬)と書いた公募作品を拝見したことがありますが、ト書きにそれらしい記述がなく呆れました。季節を表す描写が思い付かないのでしょうか。お任せされたスタッフが気の毒です。

覗き指定
 人物が室内などを覗いている場合、はしらを別に立てるべきかどうか、そんなご質問を受けたことがあります。ルール先にありきで、何を描きたいのか不在です。覗いた先で芝居があればはしらを立てれば良いでしょう。覗いていることを改めて知らせたければ、その覗いた先のはしらが立った芝居場でそれをわからせれば良い。また、視聴者・観客をその人物と同じ思いで緊張感を持たせてこっそり覗かせたければ、窓越しなり節穴なり、その人物の視点で描くのですからはしらは不要になり、ト書きで何が見えるか書けば良いのです。

翌日指定
 (夕方)(夜)(朝)以外に(翌日)という指定を拝見したことがあります。ちょっと首を傾げる表示です。シナリオは映像で語ることを書きます。翌日ということが、はたしてそれだけで伝わるでしょうか? 映像になった場合、ひょっとしたら数日後と受け取るかも知れない。日替わりは、ト書きの映像指定や台詞で語るべきことですね。

広域指定
 浜辺や野山、或いは体育館など見渡せる広い場所でのはしらの立て方。ちょっと迷いますね。基本は「そこで芝居があるかどうか」ですから、それを元に、芝居(やり取りなど)があれば、目印を定めてはしらを立ててはいかがでしょうか。「流木の側」とか「川岸1」「コート内」などです。なお、空間が仕切られている場、例えば学校の教室や病院の病室などで、それぞれの場で芝居があれば、別のはしらを立てるのが通例です。

移動指定
 同じ室内や道などを移動しながら会話したりする場合、はしらの立て方をどうするか、部屋が区切られていれば、それぞれ別のはしらが必要でし、角を曲がれば風景が変わるから立てましょう。区切られていない空間であれば、「移動しながら」とか「歩きながら」「走りながら」とト書きで指定すれば良いでしょう。ちょっと見方を変えてみましょう。どう書くか、指定するかではなく、どんな絵を希望するか、「カメラさん、こんな絵を撮ってください」そんなおつもりで指定してはいかがでしょうか。

羅列指定
 同じようなものを連ねて並べ表したいことがありますね。写真や看板などの物であったり、次々と浮かぶイメージなどです。この場合個々にはしらを立てると猥雑になります。1つのはしらの中で、「× ×」で処理するのが良策でしょう。「× ×」処理については、Q&Aの「場面転換」をご参照ください。また、その場合のはしらは「写真」「看板」「イメージ」などで構いません。

抽象はしら
 事物の性質・状態、或いは心情・感情などを表す形容詞などは一切付加せず、抽象的・文学的表現は極力避けること。無味乾燥で表すのが一番です。不可例としては「淋しげな木立」「猛々しく聳えるビル」などがあります。これは「淋しげ」とか「猛々しい」というご自分の感性、主観が入ることが問題です。受け手によって受ける印象が異なりますから、正確に伝わりにくいという理由からです。

象徴はしら
 抽象的な指定はNGですが、それを承知の上で、特に作者のイメージの強調を図る場合などは、「象徴的な指定」でも構いません。例えば「波立つ海」「群集の流れ」などです。これは主観や印象を抽象的に表しているのではなく、はっきりとイメージが伝わる事物で作者の思いを表している違いです。即ち抽象ではなく、象徴であれば可ということです。

見ると読む
 シナリオは「読んで分かせては駄目」で「見て分からせる」ものです。それを一番明確に表しているのがはしらです。


Q&A
時間経過
 時間経過を表す場合、はしらに書くのでしょうか、ト書きに書くのですか? 同じ場所で時間経過を表す場合、柱を別に立てる必要がありますか?
 刑事の張り込みが半月続いているのを表すには、どうすれば良いでしょう?
 ご質問にお答えする前に、老婆心ながら、はしらで時間の経過を指定し、表したおつもりになるのではなく、ちゃんと時間が経過したことを示す映像表現、工夫を、まずはお考えになることをお勧めします。時間経過を表す方法は、先輩たちが知恵を絞っています。今は定番となっているは、ト書きの中で、時計を表示したり灰皿の吸殻が増えるなどの小道具で表す方法や、夜になって月が出ているシーンなどを、はしらを立てて短く挿入したり、単純にタイトルで「○時間後」と表す方法などです。1つのはしらの中で××で区切るかどうかの判断については、別項をご参照ください。
(2001.11.01)

場面転換
 シーンの途中でその人物が見ている風景などを表現したい場合は、どのように書けば良いのでしょうか。
 場面転換の手法(カットバック)やその契機、或いは映像技法(FI FO OL DIS)などについては別項でお答えするとして、原稿上の表現、書き方についてのみお応えします。心象風景のフラッシュ、イメージ、回想については回想をご参照下さい。 まず基本的には別にはしらを立てるのが通常の表現手段です。ただ短いシーンは、手紙表現と同じくそのシーンの中に「× ×」とト書きの中で区切り、簡略に済ませることでテンポなどを表すことが出来ます。その区切りの最初にはそれが何であるのか、例えば「イメージ・フラッシュ」などと書き表しておきます。その記号は「× ×」以外に「× × ×」でも、その他どんな記号であっても構いません。それは作者の個性ですが、私は師匠から「× ×」』の継承を命じられました。それよりもこの場合特に留意すべき点は、繰り返しになりますが、はしらを立てる程でもない短いシーンであるという前提です。また演出に関わる映像の指定、例えば「カメラのファインダー越しに」とか「主人公の視点で」とか言った表記は、監督の領分を侵すもので嫌われることがあります。そのような指定をするまでもなく、そういう映像で表現するのがベストである、そのような映像でしか人物の心情などを表現出来ない、と判断させる内容、表現、台本が、優れた脚本ということになります。
(2002.04.21)

同じシーン
 同じシーン(例えば飛び降り)を別々の視点で描く場合、はしらは別ですか?
 今回のご質問には根本的な思い違い、間違いがあります。シーンとは「場」で、ご質問の状況は場の塊であるシークエンスです。場ごとにはしらを立てますから、当然はしらは別になります。
(2002.11.09)

駄目出し
構成
山場 「山場がない」「クライマックスが弱い」
芝居 「芝居がない」「芝居にならない」
枝葉 「話が絞られていない」
テンポ 「テンポがない」「タルい」
展開 「展開たるい」「平坦」
偶然 「偶然が多過ぎる」
辻褄 「辻褄が合わない」
小道具 「生かしていない」
伏線 「効いていない」
ご都合 「都合良すぎる展開」「作者だけの都合」
スタイル 「スタイルが変わった」「シリアスのはずが喜劇に変わった」
段取り 「段取り芝居」「人物の心情を追っていない」
過去 「過去話が多すぎる」「現在進行形で」
停滞 「話が停滞している」「先へ進め」
回想 「長すぎる」「どこからどこまでが回想か」
据わり 「据わりが悪い」

はしら
時間経過 「どう表すのか」
「・」 「同・台所などの場合は必要」「(朝)などの前には不要」
或る会社 「もっと具体的に」

クラム事務局 zimu@kuram.tv