基礎講座第14回
物語創作
シナリオ実践塾クラム
次回より第3章です。
課題回答者のみの配信になります。
第15回 第16回 第17回 第18回 第19回

課題14

 ベスト10作品からヒントや指針を得た、
貴方のオリジナル作品のあらすじを提出して下さい。

真似でも良いのですが、貴方ご自身の【切り口】を大切にして下さい。
文字数は、前回講座課題と同じ800字以内にしてください。


 締切は次の金曜日です。
 朱を入れて、添付で指導・アドバイスを行う場合があります。そのため、
 
※テキストではなく、ワード文書でご提出下さい。

 第2章以降、「S」「A」「B」などの評価は致しません。



第14講座「設定」
ビジター講座
 「お試し講座」を最後まで受講してくださった皆さんに公開しているURLです。まだご覧になっていない基礎講座の受講生は、こちらからどうぞ。なお、公開用のIDは「ユーザー名 guest」「パスワード kuram」です。皆さん個別のIDではご覧いただけません。

企画課題
 基礎講座では懸賞公募作品の創作・完成を目的にしています。ですから本来企画書で表すべき諸々の設定は、あらすじで表してください。なお、正式な企画書の書式については塾生支援「企画書作成」をご参照ください。


 まずご自分が楽しんで下さい。可笑しくて、切なくて、ハラハラドキドキして、ジーンとくる。ドラマには様々な要素があり、与えられます。そんな夢を語り、夢を与えませんか。


 ドラマ創作には嘘をつく楽しみがあります。そして、嘘は上手につかなくてはいけません。ドラマはフィクションです。

娯楽
 視聴者はテレビに娯楽を求めています。ドラマで笑い、怒り、泣きたいのです。

核2
 物語の中にも核があります。それは山場とか見せ場、或いはテーマとも呼ばれ、時にはそこから全体を作り上げたり、全体が見えたりします。 核1 

最終目標
 人間のエゴや哀しみ描きながら、結局は人が生きることへの共感と、やさしいいたわりに通じるモノを描くことです。

人生
 視聴者はドラマから人生を学びます。それを知れば、そこからもドラマが生まれるはずです。

テンポ
 【tempo】はイタリア語なんですね。音楽で、その楽曲に指定された速度のこと。どのような文章にもテンポが必要です。進み具合の速さに注意しましょう。ダラダラした文章を読まされるのは、誰でも苦痛ですよ。

パンチ
 パンチには3つの意味があります。(1)切符やカードに穴をあけること。また、そのための鋏(はさみ)や装置。(2)ボクシングで相手を打つこと。げんこつで突くようになぐること。(3)ぴりっとしたところがあり、人に痛快な印象を与える力。それぞれの意味でご自分の作品を考えてみましょう。

社会的行動
 それがあれば、家族を描いても、観客はそれ以外の外界の状況を脳裏に思い浮かべてくれます。

素材選び
険しい道
 例えば順風満帆な人生を送る人生ではなく、苦労や不利益を承知で険しい道を選択する主人公がいます。それは彼や彼女の性格であったり、人間のサガ、或いは業、はたまた天が与えた試練なのかも知れません。それを傍から見れば馬鹿と思え、悲しくもあり、情けなくもあるのですが、その思いこそ、視聴者の共感なのです。

見聞
 ご自分の身の回りから素材を得る方法もあります。大仰な仕掛けなどを考えるよりも、取り組みやすい日常の身近な見聞の中から、自分が興味のある素材をピックアップしてみるという手です。⇒発想法

惚れる
 まずご自分が惚れた素材を選んで、そこから膨らませてみましょう。ご自分がそれ程惚れていない素材をいくら弄繰り回して、脚本らしき形にまとめても、無駄な努力と結果を招くだけです。

センス
 素材選びは作者の「センス」の勝負です。依頼主や担当者からは「オリジナリティ」「差別化」という言葉で求められたりもします。センスを磨くにはまず、作者には「外」に向けて、時代や求められているものを探る「アンテナ」が必要です。「内」には「感性」です。錆付いた感情、思考では何も受け付けませんし、生み出せません。そして「好奇心」「観察眼」「連想」「想像」「夢」などが必要です。

観察
 素材は日常、経験、報道その他の中からだけでなく、森羅万象、人生到る所から拾えます。けれど同じ素材でも、その作者の着眼・観察眼の深さ次第で、生み出す作品は、駄作にも、傑作にもなります。

三匹のこぶた
  昔話や童話にも、それを最初に生み出した作者独自の思いや狙いがあります。その思いを見破って意図的に変えることで、全く違う新たな物語を創造することも可能です。例えば『三匹のこぶた』には、様々な結末パターンがあります。塾長のウロ覚えでは、三匹が力をあわせて狼を懲らしめますが、イギリスの原作では、二匹食われて、最後の一匹が敵討ちをする筈です。それも残った子豚が、鍋に飛び込んだ狼を食ってしまう。前者には毛利元就の『三本の矢』的な教訓を含めているのでしょうし、後者の仇討ちというのも塾長なりの解釈・理解です。これらは良く言えば、作者のオリジナリティ、脚色者なりの切り口ということになりますが、悪く言えば、自分の思い通りに歪曲した解釈・理解であり、そこから生み出した作品は、ただの盗作ということになります。原作者の思いや狙い・意図を理解した上で、新たな独自の切り口を創造し、提示する。それが原作を扱う場合の注意点であり、戒めです。


創作ヒント
家族(ドラマの種類)
母もの 産み母、育ての母、まま母の三人が登場して 「3倍泣けます」
映画会社の社長自ら考案。基本パターンは、
@養育の苦心。最後は報いられる。
A別れ別れの親子の劇的対面。
B母の犠牲。
父もの 立派な父親と駄目な父親。基本パターンは、死別か別離。
子供もの @純真、無垢、可憐、やさしさ
A暴力的、残酷さ、不可解。  非行少年/少女もの
老人もの
悪女もの

職業(ドラマの種類)
教師
サラリーマン
主婦
刑事
探偵
スポーツ選手
スパイ
商売人
芸術家
ピカレスク スペインに発生し、ヨーロッパ中に流行したピカロ(悪漢、ならず者) を主人公にした小説から。日本では悪漢小説、悪者小説。
アウトロー
ギャング
やくざ
ならずモノ
悪党

舞台(ドラマの種類)
学園
病院
業界の楽屋裏 バック・ステージもの)
ホテル
会社
刑事部屋
飛行場
呑み屋

ハンディキャップ(ドラマの種類)
障害者
盲目
聾唖者
難病
老い


参考事項
新聞記事
 シナリオスクールなどでは、ストーリ創りの課題(創作実習)で用いられています。選ぶなら、重箱の隅をつつくネタが良いでしょう。

判例六法
 実際の事件の具体的な判決も掲載されています。 法廷モノだけでなく、様々なネタが得られます。巻末の事件索引から拾い読みするのが良いでしょう。

裁判の傍聴
 大事件は別として、東京地裁などで簡単に傍聴出来ます。守衛さんが面白そうなのを教えてくれました。

アフォーダンス

 建築デザインなどで取り入れられている『アフォーダンス』という考え方、捉え方があります。これはアメリカの知覚心理学者ギブソンが提唱した概念で、afford(〜を与える・産出する・出来る)という動詞を元にした造語です。「環境にある実在物の意味や価値は、人間が作り出すのではなく、環境が提供するために元々備えているものである」と捉えます。『作品』や『貴方』に言葉を置き換え、課題提出の参考にして下さい。難解な概念ですが、『主観と客観』『内と外』などこの講座で度々登場する言葉を理解し深めるためにも、また思い悩むことそれ自体も、頭の筋肉を解すのに役立つでしょう。

ドア <ドアの押し板は押すためと分かり、ドアのノブは回すものだと分かる>
ドアがアフォードしているから。
椅子 <「座れ」と書いていないのに「座れる」ものだと分かる>
椅子自身が「座る」ことをアフォードしているから。
ハンドル 「つかむ」こと「つかまれる」ことをアフォードしている。
本はページをとばし読みされることをアフォードしている。
ページはめくられることをアフォードしており、読まれることをアフォードする。
本は「ある情報を伝達する」という行為をされることをアフォードする。
取っ手 取っ手を平板にすると、それは押すことをアフォードする。
取っ手をリングにすると、それは引くことをアフォードする。

不易流行
 ふえきりゅうこう。松尾芭蕉が唱えたとされる蕉風俳諧の基本理念の1つです。『不易』とは永遠に変わらない、昔から今に伝わる芸術の精神のこと、『流行』は時代に応じて変化するものを表します。矛盾しているこの2つは、実は根源は同じで、この相反する二面を備えて始めて、真の芸術として完成するという考えです。


Q&A
人物設定
 お話を考えるとき、わたしはまず設定から考えるのですが、まず人物描写が先なのですか。
(塾生010214)
 「人物描写」ではなく、まずは「人物設定」です。ドラマは、漫画も映像も、「魅力的な人物(主人公)」、これにつきます。私もシナリオを始めた時は、刑事ドラマでしたので、事件の目新しさ(貴女の言う「設定」)ばかりを追いかけました。「事件によって揺り動かされる人物の心の葛藤を描く」それがドラマの基本であり、そこに面白さがあることに気付くまで、随分時間がかかりました。それを描くためにも、まず「人物設定」です。金が欲しいと思うのは皆同じでも、貧乏人と金持ちで違いがあり、ドラマが生まれます。素材の面白さだけに頼ると、必ず行き詰まります。池に投げるのは石であろうが、コインであろうが、木の枝であろうが、何でも構わない。何かが落ちた時に出来る波紋が面白いのです。もちろん波紋を起こす目新しい設定も大切です。
(2001.03.12)

キャラクター
  プロの脚本家はキャラが勝手に動き出すといいますが、具体的にはどういう事なのでしょうか?
 シナリオ創作のアプローチには、2つのタイプと方策があると思います。一つは活字を埋めるタイプ。もう一つは映像(イメージ)を描くタイプです。前者は論理的に物語を構築していくタイプで、後者は浮かんでくる映像で話を組み立てて行くタイプ。「キャラが勝手に動き出す」というのは、どちらかといえば、後者の創作者に多いようです。これは右脳と左脳という脳の働きに関連しているのかも知れません。因みに右脳は左手をコントロールして、閃きや想像力に関与し、左脳は右手をコントロールして論理的な思考の源になっているそうです。しかしこれは極端な例えであって、人間にその二つの脳が備わっているように、右脳左脳のバランスや他の脳内の活動で、人は考え、暮らしています。イメージが浮かんでくるから優れた物語が生み出せるのかとも言えませんし、浮かんでも直ぐに画像が止まってしまったり、ずっと砂嵐が続いている方もいます。いずれにせよ映像のイメージを浮かべる鍛錬は必要です。塾生の皆さんには、まずは『テレビ画面に浮かぶご自身の作品』をイメージして頂く、そんな訓練から始めて頂きたいと考えています。この件の詳細、いずれ別項で述べます。
(2001・11.17)

クラム事務局 zimu@kuram.tv