基礎講座第13回
あらすじ
シナリオ実践塾クラム
次回講座はこちらです。
【第2章】第14回


課題13

 ベスト3作品それぞれを、800字以内で表して下さい。


  物語の筋を追うのではなく、主人公に与えられた刺激とその心情変化を主軸にして下さい。


 締切は次の金曜日です。
 朱を入れて、添付で指導・アドバイスを行う場合があります。そのため、
 
※テキストではなく、ワード文書でご提出下さい。

 第2章以降、「S」「A」「B」などの評価は致しません。


第13講座「あらすじ」
基礎知識「構成」もご参照ください。
表現手法
 物語やドラマには様々な「見せ方」があります。専門的な技術もありますし、それを表す言葉もあります。こちらでそれらについて述べます。理解が難しい言葉などがあれば、個別にご質問ください。

表現手法
裏で語る
 台本上、或いは映像などで直接表さず、見えない、見せない表現で視聴者や観客に分かってもらうやり方です。例えば苦しんでいる病人を直接描くのではなく、看護婦の詰め所に介護している家族が飛び込んで来てパニックを起こす、そんな表現で患者の苦痛や家族の苦悩まで表せますね。

省略技術
 シナリオは良く「省略の技術」であり、それが問われると言われます。いかに簡潔に自分のイメージを表現するか、或いはそんな簡潔表現によって、読み手や観客、視聴者のイメージをどれだけ膨らますことが出来るか、それがシナリオ創作上の根本課題です。「裏で語る」ような柔軟な思考や表現が求められます。

伏線
 後で起こる出来事をさりげなく前もって観客に暗示する作劇術。何気ない小道具が、重要な役割を持っていたなどです。
観客に先を読まれないように、そして観客の記憶のラインにしっかり残るように張るのが上策。

押し
 「もうひと押し」「押しが足りない」という使い方をします。受け手として物足りないということです。何が足りないかはその作品によって異なりますが、大概は人物の心情やリアクションが中途半端な場合に使われます。

シーン
 映画・演劇や小説などの一場面であり、情景・光景という意味です。シナリオでは、はしらが立っている場面を指します。

シークェンス
 全体の中で一つの話のまとまり。文章で言う一つの節。シナリオではシーンの幾つかまとまりで、大バコにあたります。

シチュエーション劇的局面劇的境遇
 状況。情況。状況設定。場面。場合。
 ドラマは、シーンとシークエンスの積み重ねで構築されます。そして、シーンやシークエンスは、シチュエーションがあって成り立ちます。シチュエーションとは通常、「物語の設定」のことですが、ドラマの根幹を成す部分、台詞、ト書き、はしらと言ったシナリオの技術で解釈する場合は、単なる「状況設定」という意味合いで用いられます。けれど、「劇的局面」「劇的境遇」がシチュエーションですから、シチュエーションは、常に劇的でなければなりません。そのためには、まずは人物(主人公)の過去や未来への興味を持たせることから考えるのが肝要です。

モンタージュ
 【montage】(フランス) カットの組み合わせ方により意味を表現する、映像の構成。合成すること、または合成された写真。

ナラタージュ
 【narratage】 narration(ナレーション)と montage(モンタージュ)から。画面外の声に合わせて物語が展開していく技法。多く回想場面、人物の追憶の言葉や心理的独白などに用いられる。画面外の言葉。

クライシス
 crisis 危機。

クライマックス
 climax  山場。劇活動の頂点。のっぴきならぬぎりぎりの頂点。

ギミック
 gimmick (1)からくり。仕掛け。
       (2)〔音〕 奇をてらった演奏。また、普通では出せないような音を用いた演奏。

紆余曲折
 道などが曲がりくねっていること。事情が込み入っていて、色々変わること。

イメージ
image(1)心の中に思い浮かべる姿や情景。心象。形象。イマージュ。(2)心の中に思い描くこと。(3)〔心〕 目の前にない対象を直観的・具体的に思い描いた像。

インサート
(1)挿入すること。差し込むこと。(2)映画で、一連の画面の間に手紙・新聞などのカットを大写しで入れること。挿入画面。

フラッシュ
flash(1)閃光(せんこう)。特に、写真撮影で、被写体に当てる閃光。閃光電球・ストロボなどを用いる。フラッシュライト。(2)映画・テレビで、ごく短い場面。

フラッシュバック
flashback(1)過去の記憶や情景がはっきりと思い出されること。(2)映画・テレビなどの編集技法の一。ごく短いショットを複数つなぐこと。驚きや衝撃などの心理表現などに使用する。フラッシュ-カット。(3)麻薬などの常用者であった者に起こる幻覚の再現。

カットバック
 cut-back  切り返し。場面転換。物語の進行中に回想シーンを入れたり、異なる画面を交互に映し出しテンポや緊張感を高める手法。

スローモーション
(1)高速度で撮影したフィルムを通常の速度で映写したときの画面に見られる、実際より遅い動き。また、そのように映した映像。VTR の場合は通常、標準コマ送り速度で撮影したものをゆっくり再生して同様の効果を得ている。(2)動作や反応がのろいこと。スローモー。

ストップモーション
 映画やテレビの画面で動きのあったものすべてが急に動きをとめ、静止画となって提示されること。また、その手法。〔英語では「齣(こま)撮り」のこと〕

出だし(発端・イントロダクション)
 ドラマの性質や方向を暗示。登場人物の性格や境遇、相互関係の紹介。時や場所を説明。
撫で型 順序立てて話の筋を進める。風景や情景、人物の環境などの描写から入る。間接法。
張り手型 最初に観客を驚かす。直接法。
天地人 出だしで語るべきこと。天は時代や状況。地は場所。人は人物です。
聞いたか坊主 歌舞伎で、幕あきに、「聞いたか聞いたか」「聞いたぞ聞いたぞ」と言い合いながら登場し、狂言の荒筋・経過を観客に知らせる数人の小坊主姿の役。能楽の「間語(あいがた)り」にならった演出法で、「道成寺」「鳴神」などで用いられている。
板つき 「板」は舞台の意。芝居で、開幕の時すでに俳優が舞台に出ていること。また、その俳優を差す。歌舞伎用語から。
空舞台 板つきとは逆に、人物が後から舞台に入ってくる。
行ってこい と言われてそこに行き、そこでの芝居があり、戻って報告をするという段取り芝居を指す。通常、省略の悪さを指摘する時に使われる。
あと説 話の真意や事件の真相などを「後で説明する」やり方。
出だしで注意すべきことは、@作者の意図する主題をそれとなく暗示すること。Aドラマの方向に沿って設定すること。B吸引力を持った面白さ、魅力を提示すること。C観客や読者を引きつける画面の美しさなどに留意すること。

結末
ハッピー・エンド 幸福な結果。紆余曲折を経て、めでたし、めでたし。
アンハッピー・エンド 不幸な終結。作者の世界観を表し、時代をも反映する。
どんでん返し 予想に反した以外な結末。180度の大逆転。ドンデンの語源は建設用語。舞台の大道具を次の道具に変えるため、ぐるりとひっくりかえすこと。また、その装置。。必然性、実現の可能性を裏付ける伏線を用意しておく必要がある。
がんどう返し 芝居で、大道具を後ろへ倒し、底になっていた面を垂直に立てて新しい場面に転換する方法。また、その装置。箱天神(はこてんじん)。龕灯(がんとう)。どんでんがえし。
ラスト・シーン 結末部分の最後の場面。劇的緊張をほぐし、カタルシス(浄化作用)を与える。余韻をもって心に残るモノ。すっきりと簡潔に。
カタストロフィ 【catastrophe】〔カタストロフ・キャタストロフィとも〕1)自然界および人間社会の大変動。変革。2)劇や小説の悲劇的な結末。破局。
ドッペルゲンガー 【Doppelgnger(ドイツ)】自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種。自己像幻視。
夢落ち 現実だと思わせておいて、実は夢でしたと落とす。裏切りの度合いや、作者の安易な創作姿勢が問われて嫌われます。
 結末は、ドラマの必然的、合理的帰結である。

脚色/潤色
 (1)物語・事件などを、芝居・映画などの台本や脚本に作ること。きゃくしき。(2)事実に色づけして面白くすること。(3)中国古典劇で、俳優の役柄また劇の筋書き。(4)古代中国で、仕官のときに差し出す履歴書。(これが原義)
 原作の力が強い時には、この言葉を使いますね。既に放送済みの台本を新たな切り口で起こすときなどには「潤色」という言葉が使われます。


Q&A
ストーリーとプロットの違い
 ストーリーやプロットは同じものと考えて良いのでしょうか? 懸賞公募では「梗概」とか「あらすじ」と言いますよね。
 まず言葉の持つ微妙な意味の違いについては、こちら(リンク先)でご紹介しています。それを参考にしてください。大体同じような意味合い「粗筋」と訳されますが、プロットは「骨組み。仕組み。構想。運び」と訳されて、ちょっと違いますね。これは単純に筋の流れを追うのではなく、作者の計算が求められているからです。ちょっと乱暴な例えですが、時間の流れに添って追えばストーリーになりますが、プロットでは、回想が入ったり、本筋と関係がないと思われるようなエピソードなども組み込まれます。つまり単純な経過の筋追いではなく、作者の計算を元に組み立てられる「仕組みや運び」まで紹介するのがプロットなのです。ですからプロットでは人物の設定や心情などがより詳しく書き込まれ、因果関係なども明らかにして行く必要があります。その違いを理解するのは中々難しいことですが、基本は人物の心情を追ってみることです。「ああなって、こうなって」ではなく、「こうだから、こうなる」と考えてながら書くと、作者の計算も浮かびます。更に乱暴な言い方ですが、「ああなって、こうなって」と書くのがあらすじ、「こうして、こうする」と書くのがプロットだと、塾長は理解しています。
(2003.09.06)

クラム事務局 zimu@kuram.tv